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「今日は君一人しか出勤していないの?」
「そうですね、今のところは。もう一人のバイトが寝坊しまして」
「もしかして、ワタル君?」
「はい、…渉とお知り合いなんですか?」
「あー…、前に一人で来たときに彼とこうやって話したことがあるんだ」
「へぇ…、」
別に珍しいことじゃない。渉は人見知りしない方、寧ろ人懐っこい方だから客と仲良くなることが多い。
俺は彼との会話もそこそこに、新しいグラスを拭き始めた。
俺の接客スタイルだ。
人見知りではないが、求められない限り、俺は自分から話すことはない。
「ところで、さ」
「はい」
2、3分の沈黙を破り、彼は口を開いた。
「君とこうやって話すの初めてだね。名前、聞いてもいい?」
「遥丞です。すみません、俺、口下手で…」
「ヨウスケ君、ね。いや、いいんだ。ワタル君みたいなタイプもいいけど、ヨウスケ君みたいに物静かなタイプもいいね」
「はあ…?ありがとうございます」
その言葉の節に違和感を感じつつ、褒められたと受け取った俺は礼を述べた。
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