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「ははっ、…ごめん、ごめん!変ないい方したね」
「い、いえ」
急に笑い出した彼に着いていけなかった。正直、渉に早く来て欲しい、そう思った。
ちくしょう、こんな日に限って寝坊なんかしやがって。
内心、舌打ちしながら彼から目をそらした。
チリン…━━━
本日二回目のベル。彼が入ってきた時とは違い、ドアが勢いよく開かれる。
「ごめん、遥丞!ああっすみません、いらっしゃいませ!……って、ああ!ハルカさん!今日はお一人なんですね!」
入ってきた勢い同様、忙しく言葉を繋いだ彼が、渉。一緒に働く同じ年、18歳のバイト仲間だ。
「20時28分、予定より早かったね」
「ワタル君、今晩は」
現在の時刻を告げる。彼は、…ハルカと呼ばれた彼は振り向くようにして微笑みを渉に向けた。
「いやあ、今日もイケメンっすね!ハルカさんは。」
「ありがとう、…ワタル君こそ、今日もカッコいいよ~」
先程の微笑みとは変わり、ふにゃりとした笑みと口調でハルカさんは返事をする。
「…それより、渉。営業中は裏口から入れよ」
「そうそう!裏口、鍵閉まってたよ!?」
「え、マジで?」
「いや、嘘。裏口回るのがちこっとめんどくさかっただけ」
「倒れろ、」
鍵を開け忘れたかと驚きかけた俺は、無駄に嘘を吐いた渉を睨んだ。
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