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そんな俺たちのやり取りを見ていたハルカさんはクスクスと笑いながら俺を呼んだ。
「ヨウスケ君、お代わり」
「あ、はい。バーボンでよろしかったですか?」
「うん、それでよろしく。」
「え?なになに?ハルカさん!いつからコイツのこと、ヨウスケ君とか呼ぶようになっ…」
「渉、早く用意しなよ。タイムカード、29分で打っといてやるから」
グラスへ再びバーボンを注ぎながら横目で渉を睨む。
「あーっサンキュッ!じゃあ、ハルカさん!ちょっと失礼しますね!」
騒々しく裏へと入っていった渉にため息しながら、グラスをカウンターへ置く。
相変わらず、静かに笑うハルカさんに「すみません、」と告げながら渉の分のタイムカードを押す。
「仲いいんだね、君とワタル君」
「腐れ縁で、…7歳からの幼なじみなんですよ」
「へえ、…いいね、そういうの」
「そうですか…?五月蝿いだけですよ」
煙草をくわえ、ポケットをまさぐるハルカさんを見ながら少しだけ、微笑んだ。
完璧そうな彼が少し慌てたようにライターを探す様を、面白いと思ったから。
「…どうぞ、よろしければお使いください」
俺は自分のエプロンのポケットから店のライターを彼へと差し出す。
「あ、っ…ありがとう…。」
俺の声に顔を上げたハルカさんは少し驚いたように目を見開いたあと、はにかむような笑みを見せた後、ライターを受け取った。
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