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世界が暗転した。
其処は暗闇。全てを隠してしまうかのような深遠なる闇。その中で自分の廻りだけがスポットライトを浴びているように明るい。
いったい此処は何だ。
今度は何処に飛ばされた。
「此処は主の心象世界。つまりは心の中じゃ」
何処からともなく声が聴こえたかと思うと目の前に突然少女が現れた。
年の頃は七、八歳。黒髪を腰あたりで切りそろえ、黒い法衣を着ている。
「……此処はいったい。あんたは誰だ」
「そう警戒せんでくれ。妾か、妾はこの指輪に宿る(……)精霊の類の存在じゃな。まさか何も知らず指輪を嵌めた、ということはあるまい?」
恥ずかしながら頷くしか選択肢はなかった。すると少女は呆れた、いや、むしろ嘆くように額に手を当て溜め息を吐いた。
「……いつの時代も人の世というものは。これではあやつと同じではないか……」
一人で納得するのは止めて欲しい。話が前に進まないじゃないか。その意を少女に伝えると。
「すまぬな。さて主殿、どうして妾を嵌めるに至ったか事情を話してはくれないか」
俺はこの世界に召還されてから今に至るまでを話した。
というかそれしか話すことがない。
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