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お母さんへ
手紙を書くのは初めてですね
私はすっかり大きくなりました
お母さんに会いたくて
何度もここを出ようと思い
抜け出した事もあります
お母さんに会いたくて
甘えたくて
涙が溢れるんです
男の癖にって
言わないでくれ
俺なりに頑張ってきました
もう、限界だったんです
周りがお母さんに話しかけたり
喧嘩して言い合いしてたり
そんな些細な事が私にとっては
とても羨ましく思ったのです
お母さんがいない寂しさや
会えない苦しみは
私にとって
凄く悲しみでしかありませんでした
そんな私が
やっとやっと
お母さんに会えました
しかし、お母さんは
病気で亡くなっていました
今は母が住んでいたアパートの仏壇の前に私がいます
私はここでは泣きませんよ
母にちゃんと顔が見えるように
瞬きさえも、殺して
話したい事がたくさんありました
一緒に遊園地にも行きたかった
この歳で遊園地だなんて、一般的には笑える話で
俺には凄く憧れる夢で
今は奥さんと、子供と
三人で休日に遊園地で子供よりはしゃいでるよ
でも、笑わないでくれ
俺にとっては幸せなんだ
めちくちゃはしゃいでるよ
ごめん。子供よりはしゃいでる。笑
俺にとっては、酒呑むより、こうして遊園地で遊ぶのが幸せなんだ
母親と来たかった
今でも変わらない夢
変わらないんだよ
夢、夢、憧れ
親戚にさ
お母さんの親友がいて
俺たち似てるってさ
今写真見たら
めちゃくちゃ写真写りが良いから
美人に見えるよ
写真写りが良いんじゃないの?
おれそんな美人じゃねーもん
なんで死んだんだよ
俺、一度でいい
お母さんって呼ばせてよ
俺、息子だよ
息子なんだよ
ねぇ、ちゃんと見てる?
会いに来たよ
こんな形で会うなんて
正直思わなかった
でも、俺が死ぬ前に会えて良かったのかもしれないね
俺だって、もうおやじだからさ
もう子供じゃないんだよ
こんな大きくなりましたよ
寒い冬だったはずなのに
その日は何故か暖かくて
雪がいきなり後ろから背中押すように降ってきてさ
雪が降る度に同じ速さで
俺の寂しさや甘えたい気持ちが
一気に溢れて
雪を恨んだりもした
主人公は俺と雪だった
時間は深夜だった
雪がめちゃくちゃ綺麗なんだよ
それでここに辿り着いた
母さん
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