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ガタン ゴトン ガタン ゴトン
電車に揺られながら、昨夜の事を思い出していた。
昨夜、夫と大喧嘩をして、家を飛び出してきた。
喧嘩の原因は、夫の浮気だ。
ただ、今回が初めてというわけでもない。
結婚してからずーっと、浮気を繰り返し、その度、反省を口にしては、また浮気を繰り返していた。
浮気される人の身になって見ろと思うが、向こうのご両親は、浮気も男の甲斐性の内だと、話を聞いてもくれない。
確かに、夫は稼ぎもいい、ルックスも悪くない。
周りからすると、優しくていい旦那様かも知れない。
だけど、私はそんな周りから羨ましがられる夫に対して、かなり不満を抱いていた。
そう、私は愛に飢えていた。
自分だけを愛して欲しいと、切実に願っていた。
だけど、願いは届かなかった。
大喧嘩をしても、必ず夫の元へ戻ってしまう。
それを知っているから、夫もそれに甘えてしまっていたのだろう。
私は、今度こそ戻らない!と思いながら、また電車を降りて、家に戻っていた。
家に帰ると、夫が笑顔で私を迎える。
「ごめんね。もう浮気しないから。静香が一番だよ。」
そう言うと、夫は私を抱きしめた。
私は、その芝居じみた演技に騙されるふりをする。
「もう、しないでね。約束だよ。」
「わかってるよ。」
そう言うと、夫は私にキスをした。
そう、夫が愛しているのは、きっと私なんだろう。
そう思う事でしか、自分を慰める事など出来なかった。
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