プロローグ

2/2
633人が本棚に入れています
本棚に追加
/98ページ
ガタン ゴトン ガタン ゴトン 電車に揺られながら、昨夜の事を思い出していた。 昨夜、夫と大喧嘩をして、家を飛び出してきた。 喧嘩の原因は、夫の浮気だ。 ただ、今回が初めてというわけでもない。 結婚してからずーっと、浮気を繰り返し、その度、反省を口にしては、また浮気を繰り返していた。 浮気される人の身になって見ろと思うが、向こうのご両親は、浮気も男の甲斐性の内だと、話を聞いてもくれない。 確かに、夫は稼ぎもいい、ルックスも悪くない。 周りからすると、優しくていい旦那様かも知れない。 だけど、私はそんな周りから羨ましがられる夫に対して、かなり不満を抱いていた。 そう、私は愛に飢えていた。 自分だけを愛して欲しいと、切実に願っていた。 だけど、願いは届かなかった。 大喧嘩をしても、必ず夫の元へ戻ってしまう。 それを知っているから、夫もそれに甘えてしまっていたのだろう。 私は、今度こそ戻らない!と思いながら、また電車を降りて、家に戻っていた。 家に帰ると、夫が笑顔で私を迎える。 「ごめんね。もう浮気しないから。静香が一番だよ。」 そう言うと、夫は私を抱きしめた。 私は、その芝居じみた演技に騙されるふりをする。 「もう、しないでね。約束だよ。」 「わかってるよ。」 そう言うと、夫は私にキスをした。 そう、夫が愛しているのは、きっと私なんだろう。 そう思う事でしか、自分を慰める事など出来なかった。
/98ページ

最初のコメントを投稿しよう!