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「宗一郎さん、朝だよ。」
静香は、宗一郎を叩き起こすかのように、大きな声で朝を告げた。
「うーん、あと5分・・・」
「あと5分ね?」
「うん。」
そう言うと、宗一郎はまた眠りにつく。
5分などあっという間にきてしまう。
静香は、また宗一郎を叩き起こした。
「5分たったよ!起きてよ!」
宗一郎は、大あくびをしながら起き上がった。
「ぎりぎりだよ。テキパキして。」
そう言うと、静香は宗一郎にコーヒーを差し出した。
毎日の日課だった。
コーヒーを飲み干し、顔を洗って、しゃきっとすると、スーツに着替えて、寝癖を直す。
男前の完成だ。
静香は、そっとため息をついた。
浮気さえなければ、いい夫なのに。
宗一郎は、離婚はしたくないが、浮気をやめる気はまったくない。
大喧嘩をしたって、静香が許してくれる事を、宗一郎は知っていた。
妻が耐える事が、夫婦円満の秘訣だと、昔の亭主関白のように思っている。
静香は、宗一郎を送り出すと、パソコンのスイッチを入れ、出会い系サイトにアクセスした。
最近、静香のストレス発散は、知らない男性とチャットで話をする事だった。
日頃の不安や、悩みを話すうちに、一人、静香の悩みにきちんと答えてくれる男性を見つけた。
その人と、チャットする事が、毎日の楽しみだった。
しかし、その男性はトラックの運転手で、朝8時から9時までの1時間しかチャットする事ができなかった。
だから、宗一郎を送り出し、すぐにパソコンの電源を入れ、彼とのチャットを楽しんでいた。
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