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「浩介に、静香さんのどこがいいの?って聞いたことがあったの。
そしたら、浩介が言ったのよ。
あなたの、意地らしいところ、素直に人の意見を受け入れるところ、それでもって、時々見せる、弱い部分だってね。
あなたのこと、今でも私は認められないけど、悔しいけど、浩介はあなたに夢中。
今日、私が静香さんと話したかったのはね、誰かに、私の思いを聞いて欲しかったからなの。
誰にも言えなかった。
私、プライドだけは高くて、友達にも、今の旦那にも、本当の気持ち話せなかった。
今でもできるなら、浩介とやり直したい。
だけど、それが無理だとわかったから、私、諦めようと思うの。」
百合は、一通り話し終わると、静香に言った。
「とにかく色々、言えてよかった。今日が会うのは最後よ。翠も、おばあちゃんに会うのは最後だからって言って、連れてきたから。」
「え?最後って、どうして?」
百合の意外な決断に、静香は戸惑った。
「だって、ずっと浩介さんに子供の事で会い続けていたら、忘れられるものも、忘れられないでしょ。
早く忘れたいの。
あなたになら、わかるでしょ?」
「百合さん・・・」
静香は、百合が本当に浩介を愛していて、自分がしてきた過ちを悔いているのだと知った。
それと同時に、百合が浩介を思えば思うほど、浩介の愛に飢えていき、自分を苦しめる事になるのだ。
それを乗り越えたいと、百合は思っているのかも知れない。
人を愛するため、人は生まれる。
同時に、人は愛するだけでは満たされない、愛されるまでは。
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