影失踪

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   それからというもの、クラスのガキ大将に君臨していた彼は事ある事に私へつっかがってきた。  そんなとき私は、ただ無償に腹が立った。表面上笑顔を繕っていても心の中ではドロドロの塊が渦を巻く感覚になるのを感じられた。  そして彼に対して一筋の想いが頭をよぎった。 「『あんな奴、言葉を発する資格なんて無いわ』」  その言葉を心の中で考えて何分が経過しただろうか。いや、実際には数秒も経っていないだろう。だが、一秒一秒がとてつもなく長い時間に感じられた。      私は怖くなった。  自分の心の中で考えた言葉ではあるにしろ、場所は町の歩道。母と買い物をした帰宅途中の出来事だ。夕暮れ時で辺り一面が朱い炎に包まれたかの様に夕陽で照り返していた。    
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