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哥哥。詩など、文章など、なんだと言うのです。父上など、曹家など、なんだと言うのです。
そんなことは、どうだっていい。そんなことのために、哥哥がお心を用いる必要などないのです。だってほら。
あんなものがなくとも、ぼくがいれば、こんなに楽しいではありませんか。
植は舞った。恍惚の沼へ転げ落ちながら舞った。
兄の皮膜に覆われた部分をとおして、悲哀がなだれ込んでくる。海のような、砂のような、広大な悲哀だった。
植は舞いつづける。決して溶けることのない兄の峻厳な悲しみを、内からの熱で燃やし尽くしてしまいたかった。食い込んだ枷(かせ)を砕いて、冷えた四肢へ血をめぐらせてやりたかった。
植は舞いつづける。絡みつく粘膜を舐め、すすり、呑み込んだ。体毛の一本から臓腑の奥まで、兄のすべてと一体になりたかった。植は舞いつづける。
哥哥。もっと、もっと来てください。ぼくは、どこまでもいっしょに参ります。ぼくたちは一体です。どこまでも。
植は舞いつづける。
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