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丕は、肘掛へ頬杖をついた。
おさまりが悪いのか、植がぐずる。抱き寄せ、衣紋のあたりへ顔を埋めさせた。植は安心したように鼻を鳴らす。寝息が素肌へ吹きかかる。
「哥哥(あにうえ)。ご一緒しましょう」
そう言って植は、丕の寝台へしばしば潜り込んできた。
掻巻きへくるまり、丕の指を握る。躊躇なく自分のくちびるへと運び、小さな歯で甘噛みをする。爪がふやけてしまうまで、入念にしゃぶる。長い時間をかけて十指すべてを舐り尽くすと、こんどは決まって胸元へ顔を埋めにくる。丕の体臭の染みついた襟を、すぼめたくちびるで吸いながら、抱いてくれとせがむ。
腕をまわしてやるだけでは飽きたらず、植は必ず、丕の素肌へ触れたがった。
好きにさせてやると、寝巻きの襟元へ潜り込んで、脇腹を撫でたりする。ときに際どい部分を弄(まさぐ)られ、ぎょっとすることもあるが、顔を見る限り他意はないようだった。
喜びにうっすらと開いたくちびるや、幸福げに緩んだこめかみを見るにつけ、その無垢さに安らいだ。
丕は、植の瞼へ触れる。
恥丘のように淡く盛り上がった眼球は、圧(お)せば破れてしまいそうな儚さで指を押し返す。あやうい弾力を楽しむ。
柔らかい眉に、短いまつ毛。額は、白粉を刷いたように滑らかだ。
針穴のごとき細かな汗の粒が、鼻の頭いっぱいに浮いている。口をつけ、舐めとってやる。淡い塩気はなんの癖も含んでおらず、植がまだ大人の男でないことを、丕へ悟らせる。
唾液の粘った鼻を嬉しげに掻いて、植は眠りへつく。
丕はじっとしている。
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