サベスティ・リルビー

Ace of Base

亡くなった男の身元は直ぐに判明する事になる。

というのも胸ポケットには名刺入れ、鞄の中には財布が入っており、財布の中にも免許証、保険証という名の身分証が転がっていたのだから当然なのだろうが。

男の名前は船越涼、41歳。
名刺に書かれた会社の住所は交差点の近くであり、直ぐに警察は会社へと赴き身元の確認作業が行われた。

船越は未婚であり、隣県に住む両親の遺体確認が完了したのは深夜になってからであった。

時を同じくして、警察は通り魔による犯行とマスコミに発表を行い、テレビ、新聞共にそれを大々的に取り上げた。

しかし、内容は有って無いようなもので、元捜査官や記者、コメンテーターの推測が飛び交う中、犯人に繋がる明確な情報はほとんど現れず、デマや推測ばかりが目立つ。

そんな中、あるテレビ局一社だけがニュースの時間枠に留まらず、ゴールデンの時間帯一時間を取り、特番として極めて真実味のある報道を行った。

それまで公表されていなかった有力な目撃者数、容疑者数は勿論のこと、現場の画像までもが公開され、放送を行ったテレビ局には苦情、意見が多数寄せられている。

ある掲示板などではその情報を元にその中に犯人がいると仮定した上で、独自の推理を行う者も少なくない。