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廊下の時計の針が11時半を指したと同時に毎週月曜日恒例の長会議が終わった様で、県警本部内の第二会議室から続々と刑事が流れ出てくる。
大きく欠伸をしながら歩く本部長の後ろから灰色の生地に黒のストライプが入ったスーツを着た茶髪の男と、刑事に似つかわしくない程色白で華奢な女性が並んで歩いている。
男は手帳を開き胸ポケットからボールペンを取り出し何かを書き込むと、ベリッとその部分を破き隣の女性に渡した。
「取りあえず、それをよろしく」
女性はやや不思議そうな表情で男を見ながらも紙を受け取ると、軽く頷き男から離れて行った。
男はその後ろ姿を見送り、一つ大きくため息をつき、近くのソファに腰を沈めるとゆっくりと目を閉じ頭の中で1ヶ月前から追い掛けている事件を考察し始める。
くるくると頭の中では目撃者や容疑者の顔が螺旋を描きながら現れては消え、また現れる。
犯人に結び付く物的な証拠はまだ何一つ見つからず、犯行が行われた場所が場所だけに錯綜した情報ばかりが1ヶ月過ぎた今でも警察本部へと寄せられていた。
浅沼は目を開くと手帳を開き先程破り取ったページに視線を落とす。
そして、またゆっくりと瞼を閉じると容疑者の顔を脳内に描き出し、目撃証言と照らし合わせていく。
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