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久しぶりの風の無い晴れた空を見て、自分とは関係なく落ち着いた天気に、無意味な妬みを覚えた。 好きになれないコーヒーを頼んでしまっている事からも、自分の心が落ち着いてないことがよく分かる。 「コーヒー飲めったっけ?」と聞かれて「えっ、あ、うん」と見事な狼狽ぶりさえも見せてしまい、落ち着きの無さは傍から見ても、明らかだ。 手持ち無沙汰を感じて、買ったばかりのオーディオプレイヤーをいじってみる。 そんな気も無いのに再生を始めたプレイヤーに驚いていると、二つの紙コップを手にして、スキニーデニムに包まれた二本の脚が戻ってきた。 あわてて電源ボタンを押すと液晶画面が、なんで呼び出したんだよ、と不貞腐れるようにゆっくりと画面を暗くした。 「もうだいぶ慣れた?」はっきりとした、久しぶりに聞く叔母さんの声が、ぼくの耳の中に響く。 「うん。まあ、いまだにうまく使いこなせてないけど」 一瞬、きょとんとした顔でぼくを見て、「違うわよ」と、すぐさま小さく笑いながらそう言った。「一人暮らし」 「ああ、そっちね」ぼくも照れ隠しに笑ってみる。確かに叔母さんが、このオーディオプレイヤーが新しく買われたものだなんて知っている訳がない。 オーディオプレイヤーを上着の胸ポケットに突っ込みながら答える。「うん。慣れたよ。さすがにもう冬休みも過ぎてるわけだし」 「そっかそっか。遊びに行くって言って、まだ行ってないもんね」 そう聞いてふと、大学入学前の引越しの日を思い出した。昔からなんだかんだと叔母さんが手伝ってくれていた。場合によっては首を突っ込んでくる、と感じた事も少なくない。
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