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温室の持ち主さんかと思って、慌てて弁解すると、彼も内緒で温室の中に入ってきたみたいでほっと一息つく。
彼は足元に落ちたクッキーに興味を持って、私が止める前に口に入れる。案の定、薬草を効かせたクッキーに微かに顔を歪めた。
笑いながら口直しにポットからお水をコップに移して渡すと余程苦かったのか一気に飲み干した。
ふと飲み干す彼の口元に傷があるのに気付いた。もし、必要ならよく効く薬草があるからと思い声をかけてみると、彼はコップを地面に置いて、私の髪を一束手に取り口付けるかのように、香りを嗅ぐ。
「…良い香りがするね」
伏せていた目がこちらに上げられる。視線が絡み合う。
本能が離れなくてはならないと警報をならしている。
後ろに身を引き、彼と距離をとる。心の中でほっと一息つくと、ちょっとわざとらしいかと思ったけど話題をクッキーやお花の話へとそらしてみた。
彼の名前はリリさんと言うらしく、リドルギアでお花屋さんをしてるらしい。何故リドルギアの方がこんな温室にいるのだろうという不思議を抱きながらも、いつか行ってみたいなと話す。
外から何かの声が聞こえるとリリさんは「それじゃ」と外へ出ていった。
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