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もうさっきからわけが分からない。
混乱する私をよそに、桐山雅人は感動したように目を潤ませ私を見つめた。
「母を赦してくれたんですね!?本当に良かった…良かった…!」
赦す…?
赦すも何も私は彼の母親を知らない。
訝しく海斗を振り返ると、海斗が一つため息をついた。
「悪いが…遊里にはこれから話すところだったんだ。明日の予定だったからな…遊里はまだ何も知らない。」
桐山雅人に向かって言い、頭を抱える。
その途端に彼の表情は曇り、気まずそうに視線を泳がせた。
「海斗…?何の話しなの?」
嫌な胸騒ぎを覚え、自然と鼓動が高まっていく。
意を決したように顔を上げ、海斗が私を見つめた。
「…彼の母親は、離婚歴がある。子供もいた。桐山雅人の父親と再婚してこいつが生まれたんだ。…彼女の離婚前の名前は…相澤遊子。」
「………え?」
「遊里…お前の産みの親だ。」
目の前が真っ暗になる。
子供に言い聞かせるようにハッキリゆっくりと言われた言葉が一気に頭に押し入ってきた。
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