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私は、幼い頃に実の母親に捨てられた。
それからは父親と兄、後に再婚した今の母親と暮らしてきた。
実の母親が…桐山雅人の母親…?
混乱する私に構わず、桐山雅人が口を開く。
「最初は知らなかったんです…本当に遊里さんが好きであんなひどい事を…。あの後、結城社長に言われた通り家に帰って母親に遊里さんの事を聞いて…それで知ったんです。最初は軽蔑しました。子供を捨てて男と駆け落ちをして…なんて最低な人なんだって。だけど先日、母にガンが発覚して…」
「待って!!」
まだ喋り続けようとする桐山雅人を遮り、落ち着かない呼吸に喉を押さえる。
もう頭の中で整理ができない。
これ以上聞けない。
聞きたくない。
勢いに任せ立ち上がる。
「わ…私には関係ない事でしょ?そんな話しをされたって…困ります!」
「遊里…落ち着け。」
「落ち着いてるわ私は!!…とにかく私には関係ない。帰って下さ…」
「関係あるんです!!」
今度は彼が私の言葉を遮った。
その顔が悲しく引きつっている。
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