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仕事に戻った拓海君の背中を見送り、庭の中で一番大きな木の下に腰を下ろす。
ゴソゴソとポケットから携帯を取り出して握り締めた。
…お兄ちゃんにかけてみよう。
きっとお兄ちゃんだって私と同じ気持ちだ。
大きかったお兄ちゃんは私以上に辛い思いをしたに違いない。
歯を食いしばって電話をかけた。
『もしもし』
優しい聞き慣れた声。
その声に少し安堵し、口を開く。
「お兄ちゃん?元気?」
『遊里か。元気だよ。お前は?海斗さんと仲良くやってるか?』
「…うん、大丈夫。」
海斗の名前に、一瞬答えに詰まった。
それを見逃さないお兄ちゃんがクスクスと笑う。
『なんだ、またケンカか?仲が良い証拠だな。』
「……」
仲が良い?
…確かにそうだ。
だけど今は…海斗の意図も気持ちも分からない。
「…お兄ちゃん、話しがあるの。」
私の真剣な声にお兄ちゃんの笑い声が止まった。
『…なるほどね。結婚して子供が…。』
話しを聞き終えたお兄ちゃんがため息をこぼす。
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