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少しの沈黙の後、お兄ちゃんが呆れたように小さく笑うのが聞こえた。
『病院は?どこなんだ?』
「え…?行く、の?」
『ああ。だって手術を受けないって言ってるんだろ?俺達が行けばもしかしたら…』
「なんで!?」
『…遊里?』
頭が沸騰したみたく熱い。
全ての血が上へ上へ昇ってきている気がした。
「…私達を捨てた人なんだよ!?子供を捨てておいて自分は幸せに暮らしてまた子供まで作って…それなのに今更!!」
『遊里?俺達ももう子供じゃないんだ。いつまでもそんな事…』
「もう良い!!お兄ちゃんのバカ!!」
怒鳴るように言い電話を切る。
そのまま電源を落として、携帯を地面に投げつけた。
いつまでも?
そんな事?
そんな事じゃない。
私はあの時辛かったよ。
苦しかったよ。
なんで捨てられたのか、なんで連れて行ってくれなかったのか、ずっと考えてたよ。
お母さんがいなくていじめられたりもした。
からかわれて、友達も居なくなって。
家に帰ってもお母さんがいない。
寝る時も、授業参観も運動会も。
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