閉ざされた扉

6/7
前へ
/77ページ
次へ
小さな子供だった私の心を閉ざしたのはあの人だ。 そしてそれを再び開いてくれた今の母が私の本当の母親。 お兄ちゃんもそう思ってると確信してた。 だけどお兄ちゃんは違うんだ。 あの人を恨んでもいない。 憎んでもいない。 死ぬのを助けるために会いに行くんだから。 …今の私の味方は、兄だけだったのに…。 ポタポタと涙が頬を伝い芝生を濡らす。 それとは反対に、私の心は乾いていくようだった。 私をいじめた子達の見下げるような目。 泣きたくて帰った家の、悲しいくらいの静けさ。 幼稚園で無理して書いた家族の絵は、貼られた次の日には誰かに破られていた。 「嘘つき」と裏に書かれた文字を見て、私はやっぱり精一杯笑った。 カラカラ。 心が乾いていく。 自分の指先が冷たくなっていくのが分かった。 先程まで怒っていたとは思えないくらい、頭の中が冷めていく。 静かに携帯を拾いポケットに突っ込んだ。 いつの間にか涙は止まり、そのまま屋敷へと歩き出す。 私の中のどこかで、扉が閉まるような音がした。
/77ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5544人が本棚に入れています
本棚に追加