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「遊里は俺の体が好きだもんな?」
全てを分かっている顔で海斗が笑う。
「ち、違っ…」
「じゃあ嫌いなのか?」
「う…」
海斗が何を言わせたいかは分かってる。
本当に意地悪なんだから。
「か…体だけじゃなくて…海斗の全部が好きだもん…。」
小さな声でボソボソというと、海斗がたまりかねたかのように吹き出した。
「ちょっ…ひどい!!」
恥ずかしくなって腕を振り上げる。
胸元をポカポカ殴ってやろうと下ろした腕は、海斗の腕にしっかりと止められた。
「…ひどいのは遊里、お前だろう?」
「え…?」
艶っぽい瞳に見つめられた途端に胸が大きな音をたてる。
「…俺をこんなに夢中にさせて…いけない妻だ。」
唇が触れ合いそうなくらい近くで囁かれる言葉に、めまいにも似たものを感じた。
「海…」
名前を呼んで首に回そうとした腕は、ドアをノックする音でビクッと固まる。
私の見開いた目を見た海斗はまたしても失礼なくらい押し殺した声で笑い出した。
「っ…」
恥ずかしさの余り言葉を失い、目で必死に海斗を睨みつける。
「お食事をお持ちしました。」
茜さんの穏やかな声だけが、部屋に響いた。
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