本音

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本音

彼は普段は余り本音を吐かない性格で 誰に大しても愚痴を溢したり他人の陰口など言ったりした所を一度もみた事はなかったし自分の実力を他人に自慢したりする事もしなかった。           そして何よりも実家の家族を大事にしていて彼のお父さんが学校に来た時も彼は凄く嬉しそうにしていたし、そして楽しそうにお父さんと話していた。 彼は編入させそして一人暮らしをさせてくれた両親に感謝していたのが良く分かった。 でもそんなK田くんだったが一度自分に大して本音を語ってくれた事があった。 あれは12月の冬の日彼と二人で帰った時の事だった。「Y助、俺が一時、 君に当たったり喧嘩した時期があったけど 実はあの時俺は君の事が凄く羨ましかったんだよね」と言ってきた。 「えっ?何で?何処が羨ましいの?反対にK田くんの方が羨ましいよ。だってK田君はギターも弾けて絵も上手い。そして一人暮らしで自由気ままに生活してる。 そっちの方が充分羨ましいよ」と言うと「だってY助くんは家に帰れば両親や姉弟がいる。そしてお母さんが温かいご飯を作ってくれる。 反対に俺は家に帰ればいつも一人だし、学校を出れば友達もいなければ知り合いもいない。そして君はたまに親の言われた小言について愚痴を溢してきた事もあったけどそれは君の事を心配しているからなんだよ。 俺は実家から離れた場所に暮らしているから家族にはたまにしか会えない。 そう考えれば君の方が俺なんかより全然いいよ」 K田君の本音を聞いて彼の気持ちが自分の心に痛い程伝わった。 普段は素直ではない彼だったが 心の中では色々と悩んでいた事、そして孤独感と戦っていた事。 一時は喧嘩ばかりしていた時期や誰に対しても完全に背を向けていた時期もあった。 あの当時はイライラして酒缶を買って呑んでいた事もあったと言う。 他にも先生達から食生活の事を心配されて弁当を用意された時も 彼は先生達にまで余計な心配や迷惑をかけたくないと 断っていた事もあった。 それだけ辛かったんだね。 K田君、あの時は君の本音が聞けて凄く嬉しかったよ。 君が本音を話してくれた事でまた再びお互いの信頼感を結ぶ事が出来た。
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