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ブルーレモン大佐は、今まで僕があった人物の中で一番姿勢がいい。
それも、180を軽く超える長身だから余計映える。
「ここに呼ばれたということがどういうことか、優秀な君ならわかっているだろう?」
貫禄のある背をしならせ、こちらに硬い灰色の髪の生えた頭を向けてブルーレモン大佐は言った。
「僕はいらなくなったんですね」
そうだ、とブルーレモン大佐は厳粛に頷いた。
そうなればもう理由はない。僕は簡単に荷物をまとめた鞄を手にとった。
「お世話になりました」
「うむ」
ブルーレモン大佐はまた窓の外に目を戻した。
僕が外の世界に出て、もう一度彼が眺めていた窓を反対側から見ると、一人の女性に怒鳴りかかられているブルーレモン大佐が目に入った。
彼女は大佐の上司ではない。まして秘書でもない。
彼女は新しく入った清掃係だった。
おそらく大佐は今こう言われているに違いない。
「なーにがブルーレモンよ。なーにが大佐よ。カガミ課長。それより、早く出て行って頂戴。清掃するんだから」
怒ることも忘れて出ていくブルーレモン大佐ことカガミ課長。
あの女性のクビは長くはないだろう。
しかし、彼女は僕の方に向かって親指を突き立てた。僕も親指を突き立てた姉に親指を突き返した。
まさか、返しそこねたスーパーファミコンの代わりにと、止めさせられそうだった僕の、現に止めさせられたあとのくだらない悪戯に協力してもらえると思わなかった。姉弟もいいものだ。
僕は帰ってきたスーパーファミコンのコントローラーを握ろうと、帰りの電車を待った。
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