pink

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私は今ピンクの部屋にいる。辺り一面ピンク。入り口も、出口もピンク。 部屋が揺れる。 下に溜まっている水が形を変え、私の足の、さっきと違う場所を濡らす。 自分の手を見る。 少しだけ縮んできた気がする。その手で、たっぷりと潤った壁を触る。 壁は、自ら纏わり付くように指に吸い付く。 壁は冷たい。しかし温かい。ぬらりとした温もり。 「あ」 口を開き、息を肺から出し、声を出す。 久しぶりに聞く声は、誰のものでもないみたいだった。その声も響くことなく、床へ、壁へ、天井へと吸い込まれた。 その時、携帯が鳴る。急いで開けると、メルマガだった。腹が立って、携帯を水の中へ投げつける。ぽちゃん。 結局、私は全部亡くしてしまったのだ。 私には何もない。そして私はいなくなる。 本来自分の為でない温もりの中で、私は目を閉じる。そしていつか死ぬ。 人知れず、一匹のケモノの中で。入ってきたときの傷はまだ痛むけれど、大丈夫だった。 それ程に、ここはとても心地好いのだ。
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