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パカパカ…というべきなのか。
パカラパカラというべきなのか。
遠くから馬の足音がする。
きっと、どっかの貴族の馬車だ。
「………。」
私は、豪華な馬車が近づいてくるのを静かに見ていた。
すると馬車は、私の目の前で止まった。
中から私と同じ歳くらいの男の子が出てきた。
オウジサマみたいな、綺麗な格好で。
「…なんだよ」
オウジサマが私をじっと見てくる。
どうせ汚いとか醜いとか思っているんだろう。
「…お前、名前は?」
「……」
私はスッと立ち上がり、顔と同じ長さまで伸びきった前髪を少し手でよけた。
コイツの顔がよく見えるように。
「ふっ…」
「何を笑っている」
そして私は可笑しくて笑ってしまった。
「名前?そんな大層なもん、持ってないよ」
オウジサマは目を細くして、私を見る。
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