-壱-

2/2
前へ
/10ページ
次へ
私の大事な…大事な鈴…。それは《りんりりぃん》と小さな音をたて鳴っている。それはそれは……平和な色に染められた……綺麗な綺麗な鈴の音色…。 …私は幸せ。…彼が居てくれる…。毎日…毎日手を繋ぎながら帰った。…そんな毎日が幸せ。今日も手を繋ぎながら帰る。夕陽が手を繋ぐ私達の影を伸ばしていた……。 綺麗な綺麗な鈴の音色が遠くから鳴り響いている。 私達の幸せは数年前から始まった。私達は夕暮れ時に出会った……。なんて事でもない出来事…。私の一目惚れ……。私からの片想いだったはず……。けど、彼も思ったみたい……彼も私を想っていた……。 数ヵ月後…。 私達は結ばれた。 綺麗な鈴の音色が鳴り響き始めたのはその時だった。 それまでの鈴の音色はどす黒い汚い音色…今にも消えそうな……音……。 そう……それまでの彼女は暗くて美しさの欠片もない貧しい少女だった。 …幸せなど知らぬ者だった…。 彼が現れて彼女は変わったのだ…。 鈴の音色は変わってゆく…。 彼女の淡い気持ちをそのまま吸い込んだような綺麗で繊細な音色に…。 彼女のキラキラした想いがつまった音色。 幸せがいつまでも続くと思っていた………彼女の想いそのものの音色だった…。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加