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"風紀隊"
と、いうのがある。
もちろん辞書にのっているわけでもなく、この大学の小俣という教授の一言でできた。
この大学のOBが麻薬栽培の現行犯である日捕まった。
小俣教授がえらく世話をやいていたOBらしく。
今この大学には、自分が栽培した麻薬を売りさばいている人間がいる、ということと、
取引の際はお互いにいつも顔を隠していたので誰かはわからない、ということを。
面会の際に漏らしたそうだ。
小俣教授のいる大学に迷惑はかけたくないので、警察には、言えないし、言いたくない、と。
そこで小俣教授が作り出したのが"風紀隊"。
つまりは、危ない奴を見つけろ、ということだ。
「なんで、俺達なんすか?」
風紀隊は俺を含め4人だ。
内の1人、柳という奴が教授に聞いた。
フルネームは、柳 恭平。
頭がよく、同じ医学部だ。
「それ、俺も、ずっと思ってました」
もう1人、柳の隣に座っていた船塚 要という奴が口を開く。
コーヒーカップをテーブルに置き、教授が言った。
「細かいことは言わないけれど、あえて言うならば君たちの、人柄、かな?」
「ひとがら?」
教授はボサボサの白い眉毛を上げ、にこりと笑う。
「そう、人柄」
「どういう?」
「義理だとか、人情だとか、仁義だとか。
そういうのに、わりと熱いところ、かな」
「…俺らの学校生活のどこから、見出だしたんすか、それは」
柳の問いに答えず教授は、
まだまだあるよ。
と言って眉毛をつまんだ。
「情に熱い人間っていうのはね、みな魂を持って生きてるんだな」
うんうん。と言って。
「つまり僕はね、君たちをかなり、信用してるんだよ」
「根拠もなくね。」
「そうかな」
「ないでしょう」
ないかな?
と言いながら教授は空を見つめた。
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