王女と絶望

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「この本…小さい頃によく見てた…タイトルは輪廻の罪人(リンネノツミビト)、だったかしら?」 そう言って、彼女は懐かしそうに微笑みながら椅子に座って本を眺めた。 「確か…大罪を犯した少年が、神様に不死という罰を与えられたっていう昔話よね。」 大罪を犯した罰が、人々にとっての永遠の憧れである“不死”でいいのかしら。 まぁ、私にはよく分からなくなってしまった事だけれど‥ そう思いながら、彼女は本を開いた。 《―昔話、ね…まぁ、そうかもな…》 するとその時、彼女一人しか居ないはずの部屋から、少年と思われる声が響いた。 「―誰っ!?」 突然響いた声に、彼女は立ち上がって周囲を見渡した。 ガタンッ…… 「…誰も、居ない……?」 床に椅子転がる音と、彼女の不安げな声だけが辺りに響く。
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