王女と絶望

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《そうだ。自殺願望、復讐心、殺人衝動などだ。》 「ある、と思う…」 自分の中ではっきりと認識した事はないが、この国の本当の姿を知った今、この胸いっぱいに漂う感情は、まさしく“負”。 だから、彼女はおずおずと答えた。 《―で?お前は何を望む?》 …私の望み? そう思いながら、彼女は自分自身に問いかけた。 彼女は、誰よりもこの国を愛し、誰よりもこの国の行く末を案じてきた。 だから彼女は今まで、この国が幸せならば、この国の民が幸せならば、例え親の言いなりになろうとも、自分自身に課せられた運命に従うつもりだった。 だけど、今の彼女にはこの国の民が幸せかどうかという問いには、一概にYESと答えられなくなってしまった。 本来ならば、自分達王族が守るべき国の民を、自分達王族が狂わせているのだ。 “欲望”と“傲慢”という、この世で最も恐れるべき人間の武器を使って。 「私、私は…この国を…この世界を、変えたい。今の世の中は…腐ってる。」 《お前…力はどれ程ある?》 魔力が物をいうこの世界、何か事を起こすには必ずそれなりの“力”がなくてはならない。 「魔力だったら…多分、水晶一つ分…」 彼女の答えに、漆黒の球体は満足そうに声を漏らした。 水晶一つ分の魔力は、一般的にいう成人男性50人分の魔力量だ。 たかだか14歳程度の少女が持つべき力ではない。 《―なる程、な…いいだろう。お前の望みを叶えてやる。ただし、一つだけ条件がある。》 「…条件?」 《簡単な事だ。お前の望みは、俺が力を貸して叶えてやる。だから、お前も俺に力を貸せ。》 「それだけでいいの?」 《あぁ。それだけだ。さぁ…お前はどうする?》 その悪魔のような問いかけに、迷いなく彼女はYESと答えた。
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