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ぎょっとして振り返って、その人を凝視する。(ここ風呂場だけど)
その人は、
柔らかそうなクセッ毛に少しツリ気味な大きな目…
一般にいう可愛い分類だろうか、そういう容姿をした女の子だった。
「あかや?」
私が不躾に見ていたせいか、彼女は可愛らしく首を傾げてもう一度同じ言葉を言った。
“あ か や”
一瞬訳が分からなかった。
だって、某テニス漫画でよく赤目になる子が浮かんだから。
『(あれ、でもそれは漫画…)』
記憶が混雑しているかのように情報の整理がつかない、
というか頭が思考がまわらない。
今の状況と記憶との筋道があまりに一致しないのだ。
「あかや?…ねぇねえっ」
私がほどほどに変な反応をするせいで彼女はかるく私をゆすった。
私は返事を返そうと思った。“貴方は誰?”と…、
「~っ、バカ也!!」
ごすんっ
『ぎゃふっ』
聞く前にげんこつがふってきた。何気痛いよ。
「もぉ、何よあかや!なんか言いなさいよ!」
『ぅあ~…ごめんって、ねーちゃん!』
あれ、私今何て言った?
“ねーちゃん”…?
ひとりっこだった私に【あね】と呼べる人はいなかったはずなのに
「どうしたの?すっごい声聞こえたのよ~!わぁぁって!おかーさんがアンタ見てきなさいーっ!って怒ったのよ」
間髪を入れず私の口はしゃべった。
『すべって、ころんだ…?』
それに反して何故か私の意識は徐々に薄れていった。
「はぁ…あたし、返る。心配して損し……えっ?
“あかや!”
そんな声が聞こえる。
ああ夢オチか…
変な夢だったな。
倒れこんだ床が少しひんやりしたのを感じて、完全にこの夢は終わった。
真っ暗になったから。
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