序章

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「ただし!」 「ん?」 「条件が一つある」 人差し指を真っ直ぐ綺麗に伸ばす親父に嫌な予感しかしない。 ここまできて変なこと言い出すんじゃないだろうな……?例えば恋をしろとか乙女チック的なもん。そんなことほざいたら即効で殴ってやる。握り拳を後ろに隠していつでも殴る準備完了。 「何があっても絶対学校を辞めないで卒業するんだ」 「……へ」 予想していた言葉とはかけ離れていて気の抜けた声を発してしまった。 「な……そ、それだけか?」 「なんだ、不満か?」 「い、いや、そんなわけねーよ!さっき親父に言った通り、ちゃんと卒業してやるよ!」 「よし。男に二言はないな?」 「ああ……って私、男じゃねーよ!」 笑いながら遠慮なく叩くと親父は少し涙目になっていた。 また高校に通える、それだけで嬉しかった。だから分からなかったんだ。これから待ち受ける波乱な日常がそこまで迫っていることに。
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