第1話

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「あー、ねみ……」 もう今日何度目だ。我慢しきれないあくびが絶えることがなく目尻に涙が滲む。あれから一睡もできず歩きながら目を瞑りそうだ。 緊張からかなのか寝付きが悪かったため今日の睡眠時間は恐らく数時間。気分を上げるにも眠気には勝てそうにない。 「……あーくそ、あの親父」 帰ったら一発蹴ってやる。いや、一発じゃ足らねー。ケーキバイキングの夢の代償は大きいってことを思い知らせてやる……! しかしその前に今の私には大きな問題があった。 「ああもう!マジで高校どこだよ!」 普段以上に頭が働かないし、体も動かない。睡眠不足な上に高校までの道のりが分からないという危機的状況だ。 あの親父……人を早く起こすだけ起こして案内ナシかよ!迷惑しかかけてねーじゃねーか!お前の出番はここだろ! 怒りで震える手に持っているのは通学鞄と薄っぺらい一枚の地図らしき紙。
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