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沈黙が重い。最初に話したきりこの数分間会話がない。初対面で話すこともないし共通の話題なんかあるわけないし、それでも世間話くらいできないのか。
歩くだけに退屈してきた私は前を歩く男について分析を開始した。
制服ってことは学生だよな。中学生には見えないから自分と同じ高校生なのだろう。私の高校と近い学校の生徒なのかもしれない。それにしたってよく連れていってくれると思う。無愛想な奴だけど……親切だ。それは認める。
大きな背中からはまるで感情が読み取れない。ただ歩く度に揺れる軽やかな髪がより不思議な雰囲気を漂わせているようだった。
「……ぶっ!」
「……なに一人で吹き出してんの?」
「てめーが急に止まるからぶつかったんだろ!」
数歩前を歩いていた男の背中が急に目の前まで迫り、鼻に衝撃が走った。
「血、出てないけど」
「血は出てなくても痛けりゃ涙は出るんだよ!」
「それよりここが青条」
「私の涙を無視すんなよ!」
若干涙目で鼻を押さえながら視線を移すと青条高校と達筆に書かれた正門があった。
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