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「勿体無いわ」
ぽつりと、つねさんがそんなことを漏らす。
もう日課になってしまった瓊の相手をしている最中に、突然言われた言葉だった。
え?と聞き返せば、彼女はあたしのすぐ後ろに座り込み
その細くて綺麗な指先で、もうすっかり短くなってしまった髪を梳く。
「折角の綺麗な髪だったのに、切っちゃうなんて」
「土方さんに、覚悟見せろって言われたんで」
へへ、と毛先を指先で弄りながら笑ってみせると、つねさんは優しく微笑み返してくれた。
あれからあたしは、一くんに髪を切ってくれと頼んだ。
いつも無表情な彼が目を見開いたのだから、余程驚いたのだろう。
小さな頃から、ずっと大切に伸ばしてきた自慢の髪。
そのことを知っていたから尚更だろうか、彼は何度も本当にいいのかと尋ねてきた。
それが可笑しくて小さく笑ってしまったことは、勿論一くんには内緒だ。
はらはらと地面に落ちていく髪を見つめながら、何度制止の言葉が出掛かったか分からない。
その度に、土方さんのあの"覚悟"という言葉があたしをぐっと耐えさせた。
これが、あたしの"覚悟"なんだから。
短くなった髪を皆に見せに行くと、反応は様々だった。
山南さんと総司は似合っていると笑顔で言ってくれて、
新さん、左之さん、平助には男みたいだと大笑いをされた。
ので、一くんが気にかけてほんの少し女の子らしく切り直してくれた。
その光景を目にして失恋でもしたのかと、誰よりも心配してくれたのは近藤さんだった。
そして、土方さんはといえば。
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