序章ー始まりは此処からー

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噂をすれば何とやら、とはこのことだろうか。 居間に入ってきたのは、近藤さんと平助の二人だった。 近藤さんに挨拶をしてからさり気なく、平助に視線を向ける。 するとあろうことか、ばっちりと視線が交わってしまったではないか。 固まるあたしを余所に、彼はお得意の優しい笑みをあたしに向けてくる。 「、っ!」 かあっ、頬の熱が一気に上昇していくのが嫌でも分かった。 美男子に免疫のないあたしは、どうしても彼の仕草や反応に慣れることが出来ない。 土方さんと左之さんも恰好いいけど、それとはまた話が別だ。 何より彼は、あたしを女の子扱いするから だから苦手なのかもしれない。 平助の視線から逃げるようにして総司の後ろに隠れる。 それを見ていた新さんと左之さんが小さく笑い声を上げたので、軽く睨んでおいた。 「話って何なんだ、近藤さん」 土方さんのいつもより幾分低い声が、居間に響く。 その場に居た八人全員が土方さんのその一言で静まり返った。 あたし達を呼び出したのは近藤さんだったんだ… それなら、土方さんが何も言わなかったのにも納得がいく。 土方さんの難しい表情に、近藤さんは困ったように苦笑いを漏らした。 誤魔化すな、とでも言いたげに土方さんは近藤さんを黙って見つめる。 すると観念したのか近藤さんは咳払いすると、一瞬にして真剣な顔つきになった。 その表情に、自然と背筋がぴんと伸びる。 近藤さんはあたし達一人ひとりの目を見てから、こう問いかけてきた。 「皆、今の京の治安の悪さを知っているか?」 京…? なんで京の話なんかが出てきたのだろう。 疑問に思い総司を見上げると、彼もそう思ったのか肩を竦めてみせた。
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