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「いんや、二人の邪魔しちゃ悪いからねぇ。俺はここに残るよ。まぁたまには遊びに行くがね」
ひらひらと手を振りながら笑ってみせた。そこには花婿になる男に対する嫉妬は微塵も無かった。本心から峰澤と沙希を祝福しているのがよくわかった。
義父の笑顔に感謝して、峰澤も笑顔のまま頭を下げた。
峰澤は義父に本当に感謝していた。峰澤の家族のことや仕事のことなど、今までもほとんど一切聞かれたことがない。
面倒くさいからなのか興味がないからなのか、そこはいまいち定かではない。
いつかは話さなければならないが、家族の話なんかプロポーズという華やかな時に話すようなことはあまり無かった。
峰澤の物心が付く前には既に父は亡くなり、母も幼少の頃に亡くなってしまった。そういう意味で、峰澤の家庭は少し普遍的でなかった。
そんな話を、今日みたいな祝うべき日に話したくなかった。
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