報告と告白

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 心遣いなのか偶然なのか、何も問い質さない義父に感謝してその日は家を後にした。  そして時は流れ、峰澤がアパートを引き払い千葉の実家へ帰る時が来た。荷物はほとんど無い。彼女の物も既に千葉に送った。あとは自分らが千葉に行くだけだった。  婚姻届は実家がある千葉のほうに既に提出し、受理されて晴れて二人は夫婦となった。  ただ心残りなのは、結婚式を挙げていないことだった。  義父は二人の結婚を喜んでいたが、やはり娘の晴れやかな姿は見たかったのではないか。しかし結婚式のことは何も言わないでいてくれた。  峰澤は「沙希に友達があまりいない」と義父が言っていたのを思い出した。結婚式を開いても祝いに来る人があまりいないのではないかと、気を遣ってくれたのかもしれない。  かくいう峰澤にも友達が多いわけではない。親もいない。親戚も少ない。こちらとしては、式は挙げないほうが何かと都合がよかった。  まったく義父には恐縮で、頭が上がらない思いでいっぱいだった。
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