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沙希が妊娠している間は主権はほとんど沙希にあった。峰澤は本当に家庭的な人であり、温厚で理解のある夫であった。
沙希の言うことに一切抗わず、頼み事はなんでも真面目に引き受けてくれた。『マタニティブルー』という「妊婦のストレス・不安」といった意味合いの言葉があるが、沙希はそんなものを全くと言っていいほど感じなかった。
常にお互いがお互いを想い支え合い、二人にはストレスなど皆無だった。
そうして月日が経ち、やがて二人の子供が生まれた。
元気の良い女の子で、無事に生まれたことを夫婦で泣いて喜んだ。
退院し、沙希と娘が家に帰って来てからが大変だった。いつの間にか家での主権は娘に移行していて、娘が泣く度に夫婦は右往左往しててんてこ舞いだった。
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