蝉時雨

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 やがて看護婦や医師が次々と出勤してきた。  中には昨晩会った人もいて、軽く会釈をしてくれたり声をかけてくれたりした。 それに対して峰澤は絶えず上の空で、ろくな挨拶を返せなかった。  一般の外来患者もやってきたようで峰澤も移動しようと思い、重い体を持ち上げようとした。 しかし思うようにうまく体が動いてくれず、また長椅子に腰を落としてしまった。  うなだれるように椅子に座り込む峰澤を見て、露骨に避ける人もいた。  周りの目なんかどうでもよかった。今の峰澤の意識の中に他人はいない。 ただ、沙希が助かってくれさえすれば…。 その言葉が頭の中を占めているだけだった。
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