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しばらくうなだれていると、不意に声をかけられた気がした。
自分の方に駆け寄ってくる小さい足音、そして間髪を入れずに小さい手が自分に触れた。
娘の優香だった。
父に会えたという嬉しそうな笑顔で峰澤の顔を覗き込んでいる。そして嬉しそうに、「パパ、パパ」と父を呼ぶ。
何故ここにいるのだろう。どうやってここに来たのだろうか。保育園の時間では…。
怒濤のように押し寄せる疑問を一掃して、優香を抱き上げた。
優香の温かい手に触れて、少し心が落ち着いた気がした。
娘の温かさに触れて安心したせいか、急に泣きたい衝動に駆られた。
しかし峰澤は素直に涙を流せる年齢ではなかった。人前であり娘の前なので、涙を流すことはしなかった。
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