蝉時雨

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 それから三十分ほど経った頃だろうか、意外にも早くに優香が起きた。 「パパ、おしっこー」  それだけ言ってイスから降りる。峰澤は優香の手を引いて一緒にトイレへ向かう。  用を済ませ、手を洗わせて出てくる。  無垢な笑みを振り撒く優香に、気の進まないことを言わねばならない。  優香を悲しませたくない、でも沙希のことを言わねばならない。  どうしようもないジレンマに峰澤は自己嫌悪する。  そして、言葉を探しながらゆっくりと話し始めた。 「優香、ママはね、今そこの部屋で寝てるんだ。 まだ起きてないけど、会いに行くかい?」  優香の頭を撫でながら言う。優香は満面の笑顔を峰澤に見せた。
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