蝉時雨

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 それは息を荒げた義父だった。そうとう慌てていて、今にもすっ転びそうな勢いで病室に入ってきた。 「あっ、お義父さん!お迎えに行けないで申し訳ありませんでした!」 「いや、遅れてすまん、洋一くん…。 沙希…沙希はまだ起きんのか?」 「はい…昨日からずっと、昏睡状態です…。」 「そうか…。」  伝えるや否や、義父はがっくりとうなだれて肩を落とした。  たった一人の愛娘が事故で重体だと言われたら、峰澤もそのくらいのショックを受けるのは当然だろうと感じた。  義父に肩を貸してロビーのイスへ座らせる。このままだと義父も貧血で倒れてしまうと心配した。 「…朝まで仕事場にいてな、留守電に気づいたのが昼だったんだ。それまで、娘の事故のことをまったく知らなかった…。 俺はヒドい親だな…。」  義父は淡々と話した。
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