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「僕で…本当に良いですか?」
無言のまま彼女は頷く。
峰澤は彼女の手を強く握り締め、頭を下げて何度も「ありがとう」と繰り返した。しばらくそのまま玄関先に二人で立っていた。
本当に泣き出しそうなほどに嬉しかった。
彼女に手を引かれ、家へ上がり込む。
そしてリビングの少し手前にある和室へ向かう。
部屋の中央の四角いテーブルの両脇には座布団が置いてあり、部屋の奥側には既に彼女の父が座っていた。
沙希から話を聞いていたらしく、家に上がってきた峰澤に一瞥すらくれず、腕を組んでどこか一点を見つめ難しい顔をしている。
娘が嫁に行くという、喜ぶべきことなのに娘の旦那を気に入ることかできない、どうしても認めたくないという心境なのかもしれない。
娘の父親とはそういうものなのかもしれない。沙希の父親も僅かばかり苦悶の表情を浮かべる。
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