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吉田兼好は今から700年前、鎌倉時代末期の人物です。
彼は朝廷に務める高級役人でしたが、三十歳頃に世の中が嫌になり、全てを捨てて僧侶となりました。
小さなボロ家で仏教を学び、和歌や詩を書いて文学者としても活動し、
世の中への悪口や本音を随筆『徒然草』におもしろおかしく書き残し、
最後は望むままに消えるように死んでいきました。
人生とはなんなのだろう、幸福とは、生き甲斐とはなんなのだろうとひたすら考える一生であった事は作品からも伺えます。
一方で『徒然草』は単なる日記でもあり、愚痴ノートでもあり、見聞した笑い話の披露場でもあったようです。
また役人として働いていた経験からか、社会についても色々思う事があったようで、彼の随筆には当時の世の中への批判や愚痴も散見しています。
鎌倉幕府の統治が崩壊し、都の伝統が失われ、
一つの時代が終焉しつつある様子を記した歴史史料でもあるようです。
吉田兼好の死後、『徒然草』は長い間埋もれていましたが、執筆から200年後の室町時代に正徹という僧が見出だします。
その面白さと内容の鋭さに感動した正徹が写本を作り、人々に広めたといわれています。
江戸時代には版元に大量出版される大人気作品となり、大名から町人までが「徒然草を書いた兼好法師」を知っていたといいます。
そして明治時代以降は、文庫にもなり教科書にも載る名作古典として不動の地位を築いたのです。
室町時代から江戸時代、そして21世紀の現代にいたるまで、日本人に親しまれ共感される『徒然草』。
700年前の世捨て人が書いた日記に、今日でも頷ける。
これはひとえに、人間の心や考えは時代が変わっても、中身は不変という事なのかも知れません…
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