一匹目、黒猫を見つめる華。

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side shinya  雲一つない青空のなか桜舞い散る春。  周りは自分と同じように真新しい制服を着て希望と期待に満ち溢れているであろう少年少女が一本の続く少し急な坂道の先にある門を目指して登り歩いていた。もれなくとも他の奴等と満ち溢れる物は少し違うが制服のポケットに手を入れて歩く僕もその中の一人だ。 ……文脈や話の流れ関係なしに始めに言っておこう。僕つまり羽立深夜(15)は人間が嫌いだ。そしてサイコメトラー……いや、更に強い能力“メモリーダイバー”でもある。  更に言うなら僕には親、兄弟や親戚がいないから……いや、これは建前に過ぎないが中学を卒業と同時に高校に行かないで働くつもりだったンだけどなァ……色々と事情があってこの春から今、歩いている坂道の先の門の更に先にある四季宮(シキミヤ)学園に入学(ハイ)る事になってしまった…。 「ハ……悩んだ所で仕方ない、か……。それに……」  苦笑を一つだけ落として坂の上の門を伸びきった前髪の間から見上げた。 (あの先にアイツがいる…ンだな……。いや、会う資格などないし、もし会っても関係ない、な…。もう五年も前からアイツにとって僕は九歳のままだから……。 ……なァ…唯華……。お前は今どうしているンだ……?)また軽く少しの間だけ苦笑を浮かべながら僕は坂を上りだした。と、そのとき。トタタッ…!とこちらに駆けてくる音と共にポスリッという軽い衝撃が背中を襲った。 『おはよぉ~~♪シン兄ぃ♪』  底抜けに明るい声に「あァ……」とだけ返した。 ……とは言っても“底抜けに明るい声”と言ったが実際には誰の耳にもコイツの声は聞こえていない。それどころか背中に取り付いた色々な事情の一つであるこの仔犬みたいなオレンジのぴょんぴょん頭の声が鼓膜(コマク)を震わせる事は絶対にない。 コイツは、陸(リク)は生れ付き声が出ないから…。 『ンふふぅ~♪』 「そンなに楽しみか?学校。」 『うんっ♪シン兄ぃといっしょだから♪』 
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