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そんな私の心の内を知ってか知らずか
薫は、押し黙る私の横を悠然とすり抜ける様にして、一旦部屋から立ち去ったかと思うと、再びヒョイと顔だけこちらに寄こし
「ちょっと来てみろよ」
そういって、人肌のビールの缶をこちらに放り投げ、リビングの方に私を促してきた。
「なッッ……によ「良いから、来てみろってッッ」
未だ警戒心の取れていない私には、お構いなしの薫の口調に
また少しムッとなりながら、渋々と薫の後に続いた私は、窓際までたどり着くと同時に思わず声を上げてしまっていた。
「す……ごッッ」
「だろ?」
薫の得意そうな嫌みな笑みをかき消すほどに
その光景は、私の胸を轟かせていた。
広大な植物園が広がっているせいか、前方に障害となる建物も無く、煌めく様な夜景が贅沢に一望できる。
そうして、そのほぼ正面に、小さいながらも東京タワーが輝いていた。
「これが、俺がここに入ろうって決めた最大の理由」
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