最悪の同居人

14/16
前へ
/52ページ
次へ
「この夜景を手に入れられるんなら、一つや二つの『コブつき』だってかまいやしねぇーって思ったんだよ」   「こっ…コブって「そりゃ、アンタの事だろ?」  他に誰が居るんだよ?と、又抜け抜けと涼しい顔で言ってのける薫に 「っっ――…はぁッッ!!?」 「クッ、ひっでぇ―顔」 「あッッんたねぇぇ~~~ッッ さっきから人の事、オカメだのコブだのってッッ!!!」  思わずアングリと口を開ける私の顔に、からかい混じりの鼻を鳴らして、又悠然とベランダに寄りかかる薫を前に ほッッんとに、なんて奴――…ッッ  再び込み上げる猛烈な憤りとともに、口を開こうとした瞬間  私は、意図せずゴクリと後に続く言葉の塊を呑みこんでしまっていた。  横顔が…  ベランダにゆったりと寄りかかる様にして、初春の柔らかな風に僅かに棚引く、その長い前髪を掻き揚げた…薫のその横顔が…  あまりにも…綺麗だったから――… .
/52ページ

最初のコメントを投稿しよう!

116人が本棚に入れています
本棚に追加