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「この夜景を手に入れられるんなら、一つや二つの『コブつき』だってかまいやしねぇーって思ったんだよ」
「こっ…コブって「そりゃ、アンタの事だろ?」
他に誰が居るんだよ?と、又抜け抜けと涼しい顔で言ってのける薫に
「っっ――…はぁッッ!!?」
「クッ、ひっでぇ―顔」
「あッッんたねぇぇ~~~ッッ
さっきから人の事、オカメだのコブだのってッッ!!!」
思わずアングリと口を開ける私の顔に、からかい混じりの鼻を鳴らして、又悠然とベランダに寄りかかる薫を前に
ほッッんとに、なんて奴――…ッッ
再び込み上げる猛烈な憤りとともに、口を開こうとした瞬間
私は、意図せずゴクリと後に続く言葉の塊を呑みこんでしまっていた。
横顔が…
ベランダにゆったりと寄りかかる様にして、初春の柔らかな風に僅かに棚引く、その長い前髪を掻き揚げた…薫のその横顔が…
あまりにも…綺麗だったから――…
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