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「に……しても、殺風景だよな?」
そう言いだしたのは、やはり薫のほうだった。
「あんたさぁ~、もう少し家具とか無かったのかよ?せめてソファーぐらいさぁ……」
「…あ……のねぇ~~」
次の日の早朝、キッチンにとりあえず取りつけたトースターから少し焦げ過ぎたパンを銜えこむと
薫は、寝ぐせの付いた後ろ髪をワシャワシャと掻きあげながら、カーテンすら掛かっていない、その見事に閑散としたリビングを見渡しながら私を振り返った。
そんな、さも『人の家具を当てにしてました』的な厚かましい薫の言い草に、朝から再びカチンとしながらも
出勤時間が差し迫っていた私は、込み上げる苛立ちを何とかグッと野菜ジュースとともに喉の奥に流し込むと、会話もそこそこに、慌ただしく支度を整えていた。
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