古傷

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   そうして私がせわしなく動き回っている間にも、薫は、涼しい顔をしてコーヒーカップを片手に、のんびりと窓に寄りかかってゆったりと窓の外を眺めている。   月曜日なのに…… 「あんたのほうこそ……って言うか、準備大丈夫なの!!?もう、七時過ぎてるんだけどッッ」  薫の余りの悠長さ加減に、ふと怪訝に思った私は、通勤用の書類の入った鞄を忙しなく確認しながら、急きたてる様な調子で薫を振り返った。 「ああ、俺、この間会社辞めて、今度フリーになったんだ」 「は?」 .
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