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ギシギシと軋む様にガタガタ揺れ動くエレベーターから駆け降り、ズシリと重いエントランスのレトロなガラス扉を押し開くと
フワリと髪を舞い上げる暖かな向かい風と眼下に広がる植物園の、その木々のみずみずしい空気が心地良く鼻をかすめて…
思わず急ぐ足を止め、瞳を凝らすように細めていると
「オラッ!!バス、もう大通りの手前だぞッッ!!?何モタモタしてんだよッッ
走れっっ、オカメッッ!!!」
「…――――はあっ!!?」
突如降り注がれた暴言に、身をよじる様にして振り仰ぐと
ベランダから身を乗り出すようにして、大声を響かせるスウェットを着たままの薫の姿が飛び込んで来て
「…――あっっンのバカッッ」
私は、咄嗟におもいっきり薫の居るベランダを睨み上げると、そんな薫の叫び声に振り返る周囲からの痛い視線を振り切る様に
またも全力でバス停に滑り込んでいた。
ほっっんとにッッ――…
本当に、一体何て奴なのッッ!!?
あんなの、一歩間違えば――…
***
「……『ヒモ』なんじゃないの?」
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